輪島塗ができるまで

専門化した職人たちの
高度な技が生む、
安心の品質と美しさ

輪島塗は、製造工程ごとに専門の職人が担当する分業制で作られています。製品は各工程で技をふるう職人の手から手へと渡され、124の工程を経て出来上がります。

職人が手製の道具を使い、四季の移ろいを肌で感じとり、木や漆と対話をしながら作りあげる輪島塗の完成までには、原木の乾燥期間を含めると数年単位の月日を要します。

惜しみなくかける手間と時間は輪島塗ならでは。椀を例にとり、作りかたをご紹介いたします。

輪島塗の魅力と取り扱い方 輪島塗の歴史

1.「木地つくり」 
椀木地(わんきじ)を作る

図面をもとに輪切りにした原木の塊を、椀の寸法より大きく削りだします。粗く削りだされた木地の原形(荒型)に、「燻煙乾燥(くんえんかんそう ※煙で木地を燻して乾燥させる技法)」を行い、その後1年ほど自然乾燥で寝かせ、含水率を調節して木地に狂いがでないようにします。無塗装の段階で、しっかりと水分を飛ばすことにより、木地の変形を防ぎ、完成後にひび割れがおきない漆器となります。

乾燥させた荒型は、ろくろにセットし、回転を利用しながら木地の内側と外側を、大小のカンナで少しずつ削りだし(挽き)ます。作業中の木地師(きじし)は荒型から目を離さず、削れる音や手に伝わる感触などを頼りに、五感を駆使して木地を形づくります。
椀の高さや形を測り外側を挽いたら、深さを確かめて内側を挽きます。光をあてると線維が透けて見えるぐらいに木地を薄く削りだすと、椀木地(わんきじ)の出来上がりです。

2.下地つくり
木地を補強する初めの一歩「木地固め」

椀木地(わんきじ)が完成したら、木地を補強する工程に入ります。
塗師(ぬりし)は、木地の接合部や亀裂などを、小刀で浅く彫ります。彫った箇所に、塗る器に合わせて先を削ったヘラを使い、刻苧(こくそ ※生漆とケヤキの粉に少量の米糊を混ぜたもの)を埋めていきます。この作業は、木地を平らに整え、完成後の塗面に凹凸が現れるのを防ぐために行われます。

次に木地面に塗る漆の接着をよくするために、鮫皮をはった板や砥石で木地の上縁などを研いで(磨いて)、さらに木地全面をサンドペーパーで研ぎ(磨き)ます。平滑に整えた木地全面に生漆をヘラや刷毛で薄く塗って布で拭い、木地の吸水性を抑えます。これら一連の作業「木地固め」により木地は補修されますが、輪島塗では、さらに強度をあげるための工程を重ねていきます。

3.下地つくり
布で木地の強度を高める「布着せ」

椀木地(わんきじ)の縁や薄く壊れやすい部分に、着せもの漆(生漆と米糊とを混ぜたもの)を接着剤に用いて、麻布や寒冷紗(かんれいしゃ)などの布を貼りつけます。この作業を「布着せ」といい、輪島塗の重要な工程の一つです。塗師(ぬりし)の指先でなでつけられた布と木地とが完全密着することにより、木地の耐久性と強度が増します。

「布着せ」した木地が乾燥したあとは、布の縁や重なった箇所を小刀で削り段差をなくします。布と木地との境目には、ヘラで惣身(そうみ)漆(ケヤキの炭化させた木粉である惣身粉に、生漆、米糊を混ぜたもの)を塗り平らにします。その後、乾燥した木地を研ぎ師(とぎし)が砥石で研ぎあげ、次の「惣身(そうみ)地付け ※下地塗りの工程」で漆が付着しやすい状態に、木地表面を整えます。

4.下地作り
堅牢さの土台は、門外不出の“地の粉(じのこ)”にあり

「惣身(そうみ)地付け」は、一辺地付け・二辺地付け・三辺地付け、と呼ばれる3段階の下地塗りの工程を総称しています。各工程では段階ごとに成分と配合割合を変えた、合わせ漆(米糊と生漆をほぼ等量に練り合わせたもの)と“地の粉(じのこ)”を混ぜた下地漆を、木地に塗り重ねていきます。

“地の粉(じのこ)”は江戸時代に発見された輪島塗の下地にのみ用いる材料で、輪島市だけで採掘される珪藻土(けいそうど)から作られます。乾燥させた珪藻土を、おがくずと一緒にオーブンで蒸し焼きにし、黄土色の珪藻土が炭のようになったものを粉砕機で砕いて作られます。

輪島塗の下地には、異なる粒子(一辺地付けに用いる粒子が最も粗く、工程が進むにつれて細かくなる)の“地の粉(じのこ)”が丹念に塗り重ねられています。ガラス質で微細な孔の無数にある“地の粉(じのこ)”に漆が浸透することにより木地は、他の産地の漆器にはない硬度を備えるのです。

5.下地作り
「塗る、乾かす、研ぐ」繰り返される作業が生み出す最高の強度

「惣身(そうみ)地付け」の最初の工程である一辺地付けでは、合わせ漆と一辺地用粉を練り合わせた下地漆を、塗師(ぬりし)がヘラを使い何度かに分けて椀に塗りこみます。特に丈夫に仕上げたい上縁は強度を増すために、生漆を桧皮(ひかわ)ヘラで塗りつけます。この技法は「地縁(じぶち)引き」とよばれる、輪島塗の伝統技法です。

一辺地付けが終了すると、乾くまで椀を寝かせておきます。乾いた椀には研ぎ師(とぎし)が砥石で「空(から)研ぎ」をかけ、次の二辺地付けで下地漆がなじみやすいように表面を滑らかにします。同様の手順で三辺地付けまで、塗る・乾かす・研ぐ作業が、繰り返し行われ、堅牢さを誇る「本堅地(ほんかたじ)」技法による下地が出来上がります。

下地作りの全工程を終えると、研ぎ師(とぎし)が仕上げをします。砥石とサンドペーパーで水研ぎをする「地研ぎ」で、表面に残っている盛り上がりなどを平滑にならし、器を出来上がり寸法と同じ正確な形に研ぎあげます(挽き物に関しては、ろくろを使用します)。
研ぎの完成度は次の中塗りの作業に大きく影響するので、研ぎ師(とぎし)は気を抜けません。ザラつきのない、つるりとした手触りになるまで、様々な砥石を使い分けて細部にいたるまで研ぎあげます。

6.中塗り
下地と上塗りをつなぎ、美しさを作りだす土台

中塗りの工程に移ると、塗師(ぬりし)は下地漆より高純度で油分を含まない中塗漆を、刷毛で椀全体に塗っていきます。生きている塗料ゆえに、漆の固まり具合は天候や湿度に左右され、日によって異なります。塗師(ぬりし)は経験をもとに漆に調整を加え、最適の粘り具合にして塗りを行います。

浸み込ませるように漆を塗りこめた椀は、塗師風呂(ぬしぶろ ※杉板で作られた漆器の収納庫)に納めて乾燥させます。漆は水分を取り込みながら固まっていくため、温度25℃、湿度65%を基準に、温湿度調整に配慮しながら一昼夜以上、椀を寝かせます。

中塗漆をほどこした椀が乾燥したら、塗師(ぬりし)は表面のホコリやゴミを、カンナなどで削り落とします。その後研ぎ師(とぎし)は、青砥石や駿河炭で、椀全面を平滑になるまで水研ぎします。この「中塗研ぎ」では、「地研ぎ」で使用したものより粒子の細かい砥石やサンドペーパーを用い、傷をつけないように配慮しながら、椀を鏡面のように仕上げます。この工程を2度繰り返したのち、表面に付着した不純物を取り除き、布で磨き上げる「拭き上げ」を行い、中塗りの作業は完了します。

7.上塗り
いよいよ輪島塗の完成

塗りの最終工程となる上塗りでは、最上質の漆をろ過させた上塗漆を使います。
季節や天候を問わず適度な厚みとムラのない仕上がりを保てるように、塗師(ぬりし)は漆の粘りを見ながら数種類の刷毛を使い分けて上塗漆を塗ります。
これらの作業はホコリや塵の入らないように、外気を遮断する温湿度調整のなされた上塗り専用の場所で行われます。たとえ真夏日であろうと、塗師(ぬりし)はエアコンのない部屋で、細心の注意を払いながら塗りの作業に集中します。

塗り終えた椀は、再び、塗師風呂(ぬしぶろ)に納めます。上塗面の漆の垂れを防ぎ一定の厚さとなるように、塗師風呂(ぬしぶろ)内に備えられた自動回転装置を定期的に回転させながら椀を寝かせます。
椀が乾燥したら、輪島塗の完成です。無地はこのまま製品になり、文様など加える場合には、この工程のあとに加飾がほどこされます。

8.輪島塗にみられる様々な加飾について

・呂色(ろいろ)
上塗りした面を、さらに研ぎ炭で磨いては生漆を摺りこむ工程を何度も繰り返し、鏡のように透明感のある艶を出していく技法を呂色(ろいろ)といいます。最終工程では、呂色炭で磨いた器を、呂色師(ろいろし)が自身の手で磨き上げ、完成にいたります。その独特の光沢は、機械では感知できない、人間の手の繊細な感覚から生みだされたものなのです。

・蒔絵(まきえ)
器に筆で漆を使い文様を描き、乾かないうちに金銀粉を蒔きつけ、漆の粘着力で文様部分に金、銀を定着させる技法を蒔絵(まきえ)といいます。輪島塗では、文政年間に会津の蒔絵師・安吉が、蒔絵の技法を伝えたといわれています。貝殻をはめ込む螺鈿(らでん)も蒔絵の技法にあたります。
文様を高く盛り上げて立体感をつける「高蒔絵」では、粒子の細かさで遠近法を表す工夫がなされるなど、他にも様々な表現技法を持つ、輪島塗の代表的な加飾のひとつです。

・沈金(ちんきん)
器を沈金ノミで削りながら文様や絵柄を彫り込み、できた溝に漆を塗りこみ、そこに金箔や金銀粉を押しこんで接着させる技法を沈金(ちんきん)といいます。溝の角度や深さに変化をつけることにより、緻密で立体感ある仕上がりとなります。
器に塗られた漆に十分な厚みがなければ成り立たない沈金は、下地・中塗り・上塗りと、たっぷり漆を塗り重ねる輪島塗に最適の技法でもあります。江戸時代より新たな技法開発に向けて試行錯誤を続けた結果、現在では高度な沈金技術は輪島塗の特色となっています。

・蒔地(まきじ)
“地の粉(じのこ)”を器の表面に蒔く技法を蒔地といいます。蒔地の魅力は、ザラザラした“地の粉(じのこ)”の質感と、金属のスプーンなどを使っても傷の入りにくい丈夫さです。食器に用いると使い勝手が良くなります。

・乾漆(かんしつ)
乾いた漆を粉砕して粉状にしたものを、器の表面に蒔く技法を乾漆といいます。表面がザラザラしており、傷の入りにくい加工です。蒔地との違いは漆を使用している点ですが、同じように耐久性に富み、食器などに使われる技法です。蒔地よりもソフトな質感が特徴です。

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