漆器のこと

うるしの国、
ニッポン

うるし、うるわし。
漆の内側から滲み出る透明な艶は、「麗し(うるわし)」「潤む(うるむ)」の語源にふさわしく、日本人は古くより、その美に魅せられてきました。

とはいえ、生活様式の欧米化と大量生産・大量消費の経済システムへの移行に伴い、私たちと漆との間には、へだたりが生じているのも事実です。

日本の文化ともいわれる漆と、もう一度親しむために。
漆の成り立ちから未来の可能性について、ここで考えていきたいと思います。

生きている漆

特殊な鉋(かんな)でウルシの木の樹皮に一文字の傷をつけた漆掻き職人が、したたり落ちる樹液を、ヘラで一滴ずつすくう。木の状態をみながら、手作業で採取される樹液の量は、ウルシ一本あたり、およそ150gと少量です。

ウルシの木は樹液を人間に渡すと、役目を終えて切り倒されます。ウルシが命と引き換えにした樹液は、漆職人のもとで精製されて漆となります。

主な成分はウルシオールで、空気中の水分を取り込みながら、酵素の働きで酸化して固まります。この働きは、漆器へと形を変えても続き、まるで呼吸をするかのようです。塗料となってもなお、木であった頃のように水を必要とする漆は、生きているともいえるのです。

触れると、ほっと身体の緩む感触は、人間と同じように、内部に水をたたえる漆ならではのもの。他の素材にはない肌への親和性は、私たちに安らぎを感じさせます。

ひとの心を癒し、五感を心地よく刺激する漆は、美しいだけではなく、塗料・接着剤としての高い耐久性も備えています。長時間の紫外線と乾燥は苦手なものの、漆はいったん硬化すると、酸やアルカリに強く、断熱性に優れています。

優美さと機能性の高さの二面性を兼ね備えた漆を、最初に精製したのは縄文人でした。約9000年前の縄文時代の遺跡より出土した装身具は、発見時に赤色の塗膜を保っており、漆のすぐれた耐久性を物語っています。

漆器の成り立ち

縄文時代前期に現れた漆は、その後、奈良時代には仏教関連の漆芸品に使われました。平安時代になると貴族により、漆器に蒔絵の加飾をほどこした調度品や、螺鈿、蒔絵、金箔貼りで仕上げた中尊寺金色堂が建立されました。

室町時代には、武士の台頭が進み、蒔絵の漆芸品の需要が更に高まりました。これ以降、職人たちの技術の向上により様々な技法が編み出され、名工の手による数多くの芸術品が生み出されていきます。江戸時代になると、日本各地で現在に伝わる工法による漆器作りが盛んに行われるようになり、漆器は日本全国に浸透していきます。

明治時代には、国内需要はもとより、政府の殖産興業政策の推進にともなう海外への輸出の奨励により、漆器の生産高は増加していきます。けれども、大正時代の関東大震災を経て昭和に入ると、その生産に陰りがみえはじめます。やがて高度成長期を迎え、プラスチック製品の需要の伸びも重なり、漆器の生産高は減少しました。平成となっても、この傾向がとどまらず、令和を迎えた今も“漆器離れ”は続いています。

一方海外では、南蛮渡来の時代に初めて漆と出逢って以来、西洋人の間では、漆芸品は極上の芸術作品とあがめられ、彼らは漆の魅力にとりつかれてきました。

日本の漆器は高額な値で取引され、ヨーロッパに渡ると、漆器は王侯貴族が鑑賞し、コレクションをする美術品となりました。フランス王妃、マリー・アントワネットも、漆器の繊細で手の込んだ美の虜となり、王妃のコレクションは、今もヴェルサイユ宮殿など3つの美術館に保存されています。

近年では、USBメモリーやスマートフォンケース、腕時計などに漆を扱った商品も登場しました。

“URUSHI”の固有名詞をたずさえた漆製品は、既存のカテゴリーを超えた広がりを見せ、愛好家は世界中に増加しています。

サイクルを終えると土に還る持続可能な、環境に穏やかに作用する天然素材である漆の持つ価値が、世界的に評価される動きもみられるようになってきました。

漆器が教えてくれる
大切なこと

2013年に、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本人の食に関する「習わし」が、世界に知らしめられる契機となりました。
「和食」をいただくときに、お椀を手に持ちますが、日本独自の器を手で持つ食事作法の成立に、漆器も関係しているとご存じでしょうか。

日本では中世の頃から、食事の際には、食器を折敷や膳にのせる習慣がありました。これらはテーブルと比べると床に近いため、器を置いたまま食べ物を口に運ぼうとすると、食べにくくなります。そのために、日本人は器を手に持って食事をするようになったと考えられています。

漆器の椀は、手に持っても熱くないうえ保温性にも優れ、口当たりはやさしく、何より軽量で持ちやすい。これがもし他の素材の器であれば、「和食」の形態は、現在とは違うものとなっていたかもしれません。

食べることは、命をいただく行為でもあります。
ウルシの木の命の結晶である漆器を口にするとき、私たちはその温もりに触れ、人や神、そして命を捧げてくれた食べ物に対する感謝の気持ちを、無意識に思い起こすのではないでしょうか。

万物に宿る霊性を信じ、自然を尊重して生きてきたかつての日本人。その生き方を、私たちの遺伝子は記憶しています。漆器と再び関わるなかで、忘れかけていた大切なものが甦ってくるように思えます。

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