職人技が結集! 輪島塗の工程とは?

「全日本人味噌汁椀輪島塗化計画」ブログでは、輪島塗の食器をもっと普段の食卓で使ってほしいと願い、とくに味噌汁椀こそが輪島塗の魅力が一番伝わると考えている田谷漆器店・田谷昂大が、輪島塗の良さや使い方、味噌汁椀をはじめとするお勧めのアイテムなどをご紹介していきます。

丈夫さと美しさを兼ね備えた「堅牢優美(けんろうゆうび)」な漆器として知られる輪島塗。これを支えているのは、製造工程ごとに専門の職人が担当する、輪島塗独自の「分業制」にあります。惜しみなくかけた手間と時間こそが、輪島塗の価値ともいえるでしょう。そこで今回は、輪島塗の作業工程についてご紹介します。

目次

1.輪島塗の工程は大きく3つ

2.加工法ごとに専門の職人がいる「木地つくり」

3.きゅう漆の工程①「下地つくり」

4.きゅう漆の工程② 「中塗り」・「上塗り」

5.輪島塗に華やかな彩りを添える「加飾」

 

1.輪島塗の工程は大きく3つ

専門の職人たちが技をふるい、124もの過程を経て完成する輪島塗。その製造工程は、大きく次の3つに分けられます。

・木地(きじ)つくり
・きゅう漆(しつ)※漆塗り
・加飾(かしょく)

補足すると、これらの作業へ入る前に「企画・意匠」というステップがあります。
どんな商品を作り、どんなデザインにするか? お客様の要望や時代のニーズをふまえ、完成イメージを作ります。

この作業は、企画から完成までをトータルプロデュースする「塗師屋(ぬしや)」の役目。塗師屋とは、各工程の職人たちを取りまとめる輪島塗独自の存在で、私ども田谷漆器店がそれにあたります。試作などを経て決定した商品の企画・意匠をもとに、製造工程へと進みます。

■Point
専門の職人たちと塗師屋がタッグを組んで完成する輪島塗

 

2.加工法ごとに専門の職人がいる木地つくり」

まずは、「木地つくり」ついて。

漆器の土台となる木地をつくるのは、木地師(きじし)と呼ばれる職人です。作業の流れとしては、山から切り出した原木を2、3年寝かせ、枯れさせるところから始まります。

お椀の木地をつくる場合、寸法よりも大きめに削り出した荒型(あらがた)と呼ばれる木地を煙でいぶして乾燥させ(燻煙乾燥)、1年ほど自然乾燥させることで、変形やひび割れが起こらない木地となります。

木地は加工法によって以下の4つに分類され、それぞれ専門の職人が担当します。

・挽物(ひきもの)/挽物師
ロクロを回転させながらカンナで木地を削り、椀、皿、茶托、鉢など丸い形状の器を作ります。材料はケヤキ、ミズメザクラ、トチ、イチョウなど。

・指物(さしもの)/指物師
「角物(かくもの)木地」とも呼ばれ、板状に加工した木材を組み合わせ、重箱、硯箱、膳、角盆などを作ります。材料はアテ、ヒノキ、キリなど。

・刳物(くりもの)/刳物師
ノミやカンナで材料を刳りぬき、曲線的な家具の足やスプーンなど、複雑な曲面を作り出すことができます。おもな材料として朴(ほお)を使うので「朴木地」とも呼ばれ、ほかにはアガチス、アテ、カツラなど。

・曲物(まげもの)/曲物師
薄く加工した柾目板(まさめいた ※直線的な木目の板)をワッパ状に曲げ、丸盆や弁当箱、おひつなどを作ります。材料はアテやヒノキなど。

■Point
器の種類によって最適な人・材料・加工法を用いる輪島塗

  

3.きゅう漆の工程①「下地つくり」

木地が完成すると、「きゅう漆」の工程へと進みます。
きゅう漆とは、木地を整えて補強する「下地つくり」から漆を塗って仕上げる「上塗り」に至るまで、20以上にもおよぶ工程を指し、非常に手間ひまのかかる仕事。下地つくり・研ぎ・中塗り・上塗りといった工程ごとに専門の職人が担当します。

まず、下地つくりにおいて輪島塗の特徴といえるのが、「本堅地(ほんかたじ)」と呼ばれる伝統的な技法。おもな工程として「木地固め」、「布着せ」、「惣身(そうみ)地付け」、「地縁(じぶち)引き」などがあります。

・木地固め
木地に生じた小さな割れや穴を小刀で浅く彫り、精製していない生漆(きうるし)とケヤキの粉に米糊を混ぜた「刻苧(こくそ)」を詰めて木地を平らに整えます。漆の接着をよくするために木地全面を磨いて平滑に整え、全体に生漆を塗って木地の強度を高めます。

 

布着せ
フチや高台など欠けやすい部分を補強するために、麻布や寒冷紗(かんれいしゃ)などの布を、生漆と米糊とを混ぜたもので貼りつけます。

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惣身(そうみ)地付け
米糊と生漆を練ったものと「輪島地の粉(わじまじのこ)」を混ぜた下地漆を一辺地、二辺地、三辺地の順に塗り重ねます。輪島地の粉とは、輪島市で採掘される珪藻土(けいそうど)を焼成・粉末化したもの。珪藻土は断熱性に優れ、漆と結びつくことで丈夫な塗膜となります。

下地漆は塗り重ねる都度、地の粉の粒子を粗いものから細かなものへと変え、塗り終えるたびに時間をかけて乾燥・研ぎ(磨き)を繰り返します。さらに丈夫に仕上げたい縁などには、部分的に生漆を塗りつける輪島塗の伝統技法「地縁(じぶち)引き」を行います。

 ↓

下地の完成
下地つくりは、木地を補正・補強し、丈夫で緻密な塗肌をつくるための大切な工程です。こうした工程によって、輪島塗の漆器らしい硬度やきめ細やかな肌合いが作り上げられています。

■Point
堅牢優美な輪島塗の土台を支える「本堅地」技法と「輪島地の粉」

  

4.きゅう漆の工程② 「中塗り」・「上塗り」

下地が完成すると、中塗り・上塗りの工程へと移ります。

「中塗り」は、上塗りを美しく仕上げるための作業。下地漆よりも高純度で油分を含まない中塗漆を、器全体に浸み込ませるようにハケで塗りこめ、塗師風呂(ぬしぶろ ※杉板でできた収納庫)に納めて乾燥させます。漆は水分を取り込みながら固まるため、温度25℃、湿度65%を保つよう温湿度調整しながら一昼夜以上寝かせます。

器が乾燥したら塗師が表面のホコリやチリを削り落とし、研ぎ師が器の全面を平滑になるまで水研ぎします。この工程を2度繰り返したのち布で磨き上げ、中塗りの作業は完了します。

続く「上塗り」は、ホコリやチリが入らないよう外気が遮断され、温湿度が調整された上塗り専用の部屋で行います。
上質な上塗漆の粘り具合を見ながら刷毛を使い分け、塗り終えた器は、再び塗師風呂へ。

塗面の漆が垂れてムラにならないよう、一定の時間ごとに自動回転装置を回転させ、器が乾燥したら輪島塗の完成です。無地の漆器はこのまま製品となり、文様などを加える場合は加飾を施します。

■Point
ホコリやチリがつかないよう細心の注意を払い、艶やかな漆塗りに

  

5.輪島塗に華やかな彩りを添える「加飾」

加飾とはその名の通り、完成した輪島塗の漆器に飾りを加えること。

おもな技法として「呂色(ろいろ)」、「蒔絵(まきえ)」、「沈金(ちんきん)」があり、それぞれ呂色師、蒔絵師、沈金師と呼ばれる専門の職人たちが高度な技を施します。

・呂色
上塗りした面をそのまま活かす塗立(ぬりたて)に対し、呂色は上塗りした塗面をさらに研ぎ炭で磨いては生漆を摺りこむ作業を繰り返し、鏡のような透明感を出します。最後に人の手で器を磨き上げ、漆独特の深みを帯びた光沢を引き出します。

蒔絵
器に漆をつけた筆で文様を描き、乾かないうちに金銀の粉を蒔きつけて漆の粘着力で定着させます。文様を高く盛り上げて立体的に見せる「高蒔絵」をはじめとする多様な表現が可能で、貝殻の破片をはめ込む螺鈿(らでん)技法も蒔絵の一つです。

沈金
漆器をノミで削りながら文様や絵柄を彫り、そこに漆を塗って金箔や金銀粉を押し込み、装飾を施します。基本的な線彫りや点彫りに加えて、刃先の形状や彫る角度によって、変化をもたらすことができます。沈金は塗り重ねた漆に十分な厚みがないと成り立たないため、漆をたっぷり塗り重ねる輪島塗と相性が良く、輪島塗の特色の一つとなっています。

■Point
沈金をはじめとする加飾の技法により、輪島塗の価値はさらに高まった

 

今回ご紹介した輪島塗の工程は、124におよぶ中のごく一部。このように、輪島塗は膨大な手間をかけて完成します。

とくに時間と手間を要する「下地つくり」の場合、完成してしまえば外見からは判断しづらく、上手く手抜きすることも可能かもしれません。しかし、使い続けていくうちにボロが出る。漆本来の強さや魅力を保つことは難しいでしょう。

輪島塗の場合、たとえ見えない下地でもしっかり手をかけているからこそ長持ちしますし、使い続けるうちに不具合が生じても、修理しながら使い続けることができます。

時間と手間を惜しまず、自然素材とひとの手で純粋に作り上げていく。こうした実直な仕事こそが信頼となり、堅牢優美な輪島塗のブランド価値に繋がっているのだと思います。

 

【田谷漆器店・田谷昂大】

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