厳選! 輪島塗の沈金(ちんきん)について解説

「全日本人味噌汁椀輪島塗化計画」ブログでは、輪島塗の食器をもっと普段の食卓で使ってほしいと願い、とくに味噌汁椀こそが輪島塗の魅力が一番伝わると考えている田谷漆器店・田谷昂大が、輪島塗の良さや使い方、味噌汁椀をはじめとするお勧めのアイテムなどをご紹介していきます。今回は輪島塗に美しい模様を加える技法「沈金」についてご説明します。
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日本料理で提供された汁椀のふたを開いたとき、その裏に描かれた繊細な黄金色の絵柄にうっとり……。そんな経験、ありませんか?

日本が世界に誇る石川県の伝統工芸「輪島塗」にはさまざまな工程がありますが、なかでも代表的な技法のひとつに「沈金」があります。

そこで、今回は「沈金」の歴史や特徴、そして、数ある漆器のなかでも、なぜ輪島塗が沈金技法における秀でた存在となったのか? それぞれ解説していきたいと思います。
 
 

目次

1.輪島塗の沈金は、高度な技術が支える漆(うるし)の金箔アート

2.漆器の装飾技法・沈金、そのはじまりは?

3.沈金は、輪島塗にこそ最適な技法

4.沈金の輪島塗食器で、日々の食卓が「ハレの日」になる

 

1.輪島塗の沈金は、高度な技術が支える漆(うるし)の金箔アート

「沈金」とは、輪島で盛んに行われるようになった加飾の技法。

漆器の表面に沈金ノミで絵柄を彫り込み、溝となった部分に漆を接着材として塗り重ね、金箔や金銀粉、あるいは色の粉を埋めて(沈めて)、模様を描き出します。

輪郭線などの「線」や細かな「点」を彫って文様を描いたり、彫り込む溝の角度や深さに変化をつけたりすることによって、緻密で立体感のある仕上がりに。

この沈金という加飾は、塗面を彫って金や色粉を沈ませる技法だけはありません。塗面に金箔を貼ったり、金粉や色粉をすり込ませるように載せたりするなど、技法の幅を広げることで、多彩な表現を用いた商品が展開されるようになりました。

彫り込みが浅すぎると金箔がうまく載らなかったり、逆に深すぎるとせっかく塗り固めた漆が割れたりするため、高度な熟練の技が必要とされます。
私ども田谷漆器店にも沈金ひと筋50年以上のベテラン職人・高出英次さんがいますが、彼でさえ「毎回緊張感をもって作業している」と語ります。

■Point
点や線、角度や深さによって多彩に表現できる「沈金」技法

 

2.漆器の装飾技法・沈金、そのはじまりは?

熟練職人の高度な技によって受け継がれてきた沈金ですが、
いつ・どこで誕生したのでしょう?

沈金の歴史は古く、宋代(960~1279年)に中国で誕生し、明代(1368~1644年)にかけてもっとも盛んだったといわれています。
中国では“鎗金(そうきん)”と呼ばれ、日本に伝わったのは鎌倉・室町時代。この技法を日本で取り入れ、「沈金」と称した加飾が漆器に施されるようになりました。

輪島に沈金の技法が伝わったのは、江戸時代享保期(1716~1735年)のこと。

輪島塗の販売方法といえば、問屋を通さず「塗師屋 (ぬしや)」 (漆器の企画から製造・販売までを取りまとめるプロデューサー的存在) が自ら全国へ行商に出向くのが特徴でした。

これにより職人たちは最新の文化や情報に触れることでき、新たな技法開発に取り組んだ結果、高度な沈金技術が特色の一つとなり、輪島塗の発展に大きく貢献したのではないかと思います。

■Point
塗師屋の行商によって発展した、輪島塗の沈金技術

 

3.沈金は、輪島塗にこそ最適な技法

この沈金は、輪島塗と相性の良い技法とされています。
なぜなら、塗り重ねた漆の器に「彫り」で加飾を施すため、漆器に十分な「厚み」がなければ成り立たないからです。

輪島塗は124の工程を経て完成しますが、漆塗りだけでも「下地塗り・中塗り・上塗り」と、漆の層がミルフィーユのように積み重なり、さらに輪島塗独特の“地の粉(じのこ)”を漆に混ぜることで、沈金を施すのに十分な強度をもたらしています。

この堅牢な漆塗りの上に沈金を施すわけですが、工程は次のような流れとなります。


【沈金の工程】
●和紙に下絵を描く「下絵(したえ)」


●無地の塗面に下絵を写す「置き目(おきめ)」



●沈金ノミで点や線を彫って文様を描く「素掘り(すぼり)」



●彫った溝に接着剤となる漆を塗り、余計な漆を拭きとる「漆の擦り込み」


●彫った文様の上に金・銀の箔や粉を埋める(沈める)「箔置き(はくおき)」・「金入れ(きんいれ)」



●湿気を与えて一定時間おいて乾かし、漆に金箔などを「定着」


●余分な箔を拭き落とし、さらに時間をおいて完全に乾かす「仕上げ」


こうして完成した繊細な沈金細工は、黒や赤の漆器に映え、しっとりと艶やかな風情を醸し出します。

■Point
沈金は、漆をたっぷり塗り重ねる輪島塗にこそ最適な技法

 

4.沈金の輪島塗食器で、日々の食卓が「ハレの日」になる

こうした沈金などの加飾を施した漆器ですから
「うっかり傷が入ったら嫌だから、特別な日だけ使おう」と考えがち。

しかし、丁寧な仕事がなされたものだからこそ
もっと毎日の暮らしのなかで使ってもらいたいと思うのです。

特に輪島塗の場合、前述のように124もの工程を経て作り込まれた「堅牢さ」も特長の一つ。通常の食器と同じように取り扱っても傷やヒビ割れなどを心配する必要はありませんし、長く使い続けるなかで破損があった場合も修理が可能な点も、輪島塗の良さです。
(ただし「乾燥」には弱いので、食器洗い乾燥機だけは避けてください)

そして何よりも、沈金の漆器を日常づかいとしてオススメしたい一番の理由は、
その気品ある輝きが、使う人の気持ちを高め、幸福感をもたらしてくれるから。

たとえば、嬉しいことがあった日。
沈金を施したお椀に汁物をよそって、ささやかな祝膳を演出してみる。

たとえば、気分が落ち込んだ日は、黒い漆器に沈金の文様を描いた酒器で一献。
器の底にゆらゆらと揺れる風情を、ただ静かに眺めてみる。

沈金の輝きがこころにそっと寄り添い、小さな明かりを灯してくれると思います。


ちなみに、田谷漆器店でもこうした沈金細工の妙を感じていただきたいとの思いから、開発した商品があります。

それが、こちら。
 

輪島塗 酒器揃え・月と菊

 

ほかにも「お誂え(おあつらえ)」、つまりオーダーメイドでお好きなデザインや絵柄を沈金で施すといった楽しみも。
ワクワクしながら完成を待つ時間も楽しいですし、世界にひとつ、自分だけの輪島塗を手にしたときの満足感は計り知れません。

当店でもイメージや内容の立案からご要望を形にするお手伝いをしておりますので、気軽にお問い合わせください。


いかがでしたか?

まずは、ぐい呑みや汁椀といった使いやすいものから、沈金の輪島塗を取り入れてみる。毎日の暮らしにキラキラした小さな幸せを、もたらしてくれると思います。

【田谷漆器店・田谷昂大】

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輪島塗と同じ技法で漆塗りを施しますが、上塗りの工程を行わないカジュアルな漆器を新しく開発しました。拭き漆とは、生漆(きうるし)を塗った後布で拭き上げる技法で、耐水性・防腐性に優れた漆の効果を備えています。

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