輪島塗の蒔絵とは? 歴史や技法について解説

「全日本人味噌汁椀輪島塗化計画」ブログでは、輪島塗の食器をもっと普段の食卓で使ってほしいと願い、とくに味噌汁椀こそが輪島塗の魅力が一番伝わると考えている田谷漆器店・田谷昂大が、輪島塗の良さや使い方、味噌汁椀をはじめとするお勧めのアイテムなどをご紹介していきます。
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「堅牢優美(けんろうゆうび)」と称される輪島塗の魅力を支えているのが加飾、つまり美しい装飾です。朱塗りや黒塗りの輪島塗にさまざまな技巧で彩りを添えることで、漆器の魅力を一層、きわ立たせてくれます。

そこで今回は、輪島塗に施す加飾の一つ、「蒔絵(まきえ)」について取り上げたいと思います。
 

目次

1.輪島塗は蒔絵の後発参入組

2.さまざまな技法を駆使した流麗優美な蒔絵アート
・平(ひら)蒔絵
・研出(とぎだし)蒔絵
・高(たか)蒔絵

3.鑑賞用か、実用か。蒔絵のデザインをどう選ぶ?

 

1.輪島塗は蒔絵の後発参入組

「蒔絵」とは、読んで字のごとく、漆で絵柄を描いた漆器の表面に金・銀の金属粉や色粉を蒔きつけて付着させる、日本独自の技法です。

奈良時代にはじまった蒔絵が輪島塗に取り入れられるようになったのは、江戸時代後期にあたる文政年間(1804〜1830年)。会津の蒔絵師・安吉が、その技法を伝えたといわれています。

安土桃山時代(1568〜1600年)には、すでに蒔絵を施した漆器がヨーロッパに向けて大量に輸出されていた記録があることをふまえると、輪島塗は、いわば後発組。

しかしながら、輪島塗はある時代の節目をきっかけとして、蒔絵を強みとするチャンスを得ます。それは、明治維新でした。

明治維新によって藩の庇護や武家の需要を失った漆器産地の多くが陰りを見せるなか、分業制や行商による対面販売といった独自のやり方を貫いてきた輪島塗は、新たな顧客層を開拓。職を失った全国の蒔絵師たちを輪島に受け入れることで蒔絵の技術は発展していきました。

その結果、輪島塗ならではの加飾技法「沈金」に「蒔絵」という新たな技法が加わり、輪島塗のブランド飛躍へと貢献したのです。

■Point
明治維新によって蒔絵の技術を高めた輪島塗

 

2.さまざまな技法を駆使した流麗優美な蒔絵アート

蒔絵には、大きく分けて次の3つの技法があります。
 

・平(ひら)蒔絵

蒔絵の中でもっとも基本的な技法です。漆で文様を描き、金粉や銀粉を蒔きつけて乾燥させ、文様の部分にだけ漆を塗り重ねて、炭や砥の粉(とのこ/砥石などの石の粉末)などで磨き上げます。平蒔絵=平たい蒔絵という意味ですが、実際は下地よりも蒔絵の面がわずかに盛り上がります。
 

・研出(とぎだし)蒔絵

蒔絵のなかでも一番古くからある技法です。平安時代に完成したこの研出蒔絵によって、日本の漆器の精緻な美しさは世界で「japan」と評されるまでになりました。

工程としては、絵漆で文様を描いて金粉や銀粉、色粉を蒔きつけ、乾燥後に透漆(すきうるし)や黒漆を塗って、再び乾燥。これを木炭で蒔絵の面まで研ぎ出し、さらに生漆(きうるし)を摺(す)るように薄く塗る「摺漆(すりうるし)」を施し、油と砥の粉(とのこ)で磨いて仕上げます。

平蒔絵と違って漆と蒔絵の面の高さが均一なため、表面を強く傷つけたり、無理に削ったりしない限り、金粉が剥がれることはありません。
 

・高(たか)蒔絵

漆などで文様を肉厚に盛り上げ、立体的に見せる技法です。高く盛り上げる方法としてはいくつかありますが、一般的に用いられているのは「漆上げ」。上塗りを施して乾燥させ、器の蒔絵を施す部分に漆を厚めに塗って盛り上げます。そこへ「平蒔絵」や「研ぎ出し蒔絵」を施していくため、かなりの時間と労力を要します。

そのほかにも、貝殻をはめ込む「螺鈿(らでん)」や、白い卵の殻を用いた「卵殻(らんかく)」なども蒔絵の技法にあたり、これらを駆使した多様な表現が可能です。

こうした仕事を施すのは蒔絵師(まきえし)と呼ばれる人たちで、緻密で美しい絵柄を完成させるためには、高度な技術と集中力を必要とします。

■Point
繊細緻密な蒔絵の技法は、蒔絵師の腕の見せどころ

 

3.鑑賞用か、実用か。蒔絵のデザインをどう選ぶ?

蒔絵を施した輪島塗の商品といえば、蓋つきの汁椀やお盆、重箱、硯箱といった生活道具や、棗(なつめ)、棚など茶道に用いる茶道具。また、時代の変化に応じてタンブラーや万年筆、ペンダントなどのアクセサリーといった現代的ものまで、さまざまなものがあります。

蒔絵のデザインにおいても、桜や秋草、鶴などの花鳥風月をモチーフにした、いわゆる高級漆器らしい絢爛豪華な絵柄を施したものは、調度品として鑑賞する楽しみも。

しかし、そうした古典的なデザインばかりではありません。

たとえば、私ども『田谷漆器店』で販売している輪島塗の三段重「溜に金(ためにきん)」。

こちらは、溜塗(ためぬり)で仕上げた重箱の上縁に施した金縁蒔絵がアクセントとなり、漆塗りの艶やかな美しさをモダンに引き立ててくれます。

このような蒔絵の漆器であれば、シーンを選ばず使い回しが効くので、実用向けの生活道具として取り入れるのにぴったり。

観賞用か、実用化か。目的はいずれにせよ、自然由来の素材でできた輪島塗は、人が手に触れ、使い続けることで、より輝きと味わいを増していく漆器です。


心豊かに暮らすアイテムとして、蒔絵の輪島塗を加えてみる。

夜空を照らす無数の星たちのようなきらめきが
気持ちを明るく照らしてくれることでしょう。


[平蒔絵

輪島塗 ぐい呑「魚泳グ(さかなおよぐ)」

 

[研出蒔絵]

輪島塗 二段重「日本昔話」

 

[モダンな金縁蒔絵]

輪島塗 三段重「溜に金(ためにきん)」

 

【田谷漆器店・田谷昂大】

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