人にも、自分にも、誠実に。職人たちがプライドをかけて挑む、堅牢優美な輪島塗。

「全日本人味噌汁椀輪島塗化計画」ブログでは、輪島塗の食器をもっと普段の食卓で使ってほしいと願い、とくに味噌汁椀こそが輪島塗の魅力が一番伝わると考えている田谷漆器店10代目・田谷昂大が、輪島塗の良さや使い方、お勧めのアイテムなどをご紹介していきます。今回は輪島塗の職人についてです。

輪島塗というと、「高級な漆の器」のイメージがあるかもしれません。
たとえば田谷漆器店のフリーカップ「木々」ですと、税込で1万1000円。
断熱性に優れているので、コーヒーやスープといった熱いものからアイスクリームなどの冷たいデザートまで幅広く使えて、ご好評いただいています。

「えっ? 普段使いの器で1万円以上するの!?」

陶器や磁器といった焼き物と比べるとそう思われるかもしれませんが、私にしてみれば、リーズナブルだと思えてなりません。

そう聞いても信じられないというあなたも、今回お伝えする“輪島塗”の職人たちの工夫や、その工夫による効果を知ったら共感できるかもしれません。

では今回は、輪島塗の職人を見ていきましょう。

1. 徹底した仕事で絹肌のような「木地(きじ)」を生み出す職人

前回の記事でお伝えしたように、輪島塗は工程ごとに専門の職人がいる「分業制」。
124もの製造工程があり、職人たちの高度な技術が積み重なって、ようやく完成します。

輪島塗が「堅牢優美(けんろうゆうび)」と表現されるのも、さまざまな職人の手を経て、丈夫さと美しさを兼ね備えているからこそなのです。

輪島塗は大きく分けて3つの構造で成り立ち、人体に置きかえると骨格が「木地」、筋肉や脂肪は「下地」で、それらを覆う皮膚が「中塗り・上塗り」となります。

初期工程である木地づくりの職人・小谷文昭(こたに・ふみあき)さんの仕事を見せてもらったとき、徹底した仕事ぶりに目を見張りました。

まずは2年寝かせ、さらに燻煙乾燥させた材木から、節(フシ)のない部分を切り出します。
自然素材ゆえに生じる歪みや反りをカンナで削って整えた後、角度や厚みを成形。全方向をくまなくチェックし、手触りを確かめながら、カンナや紙ヤスリで表面をなめらかに仕上げていく。

道具の手入れも欠かさず、ときには自作の道具まで作ってしまう小谷さん。その仕事を見ていると、木地への深い愛情が伝わってきます。

田谷漆器店のYouTubeチャンネル「TAYAちゃん! 輪島塗 田谷漆器店」では、小谷さんの木地作りに密着した動画をご紹介しています。そちらもぜひご覧ください!

2. 新品同様の色ツヤを復活させる、「呂色(ろいろ)」のワザ

また、輪島塗に飾りや加工などを施す「加飾」の一つに、「呂色」という技法がありますが、これを専門とするのが呂色師・江尻一希(えじり・かずき)くん。
実家の家業を継いで3年目、私にとって地元の後輩でもあります。

呂色とは、漆で上塗りした面を、さらに研ぎ炭で磨いては生漆を摺りこむ工程を繰り返し、鏡のように艶を出す技法のこと。
輪島塗は修復できることが大きな特長の一つで、修理のご依頼も多いのですが、そこで頼りになるのが彼の仕事です。

色が焼けて褪せたもの、漆が欠けたモノでも、呂色で手をかけると新品同様に。
「どんな状態であろうと、色ツヤを復活させられるのが漆器の面白さであり、難しさでもあります。輪島塗であれば、直せないものはありません」と、一希くんは胸を張ります。

ちなみに冒頭でご紹介したフリーカップ「木々」は、一希くんが呂色を施しました(もちろん新品です)。自分が手がけたカップで飲む焼酎ロックは、口当たりも味も格別だそうです。

「TAYAちゃん! 輪島塗 田谷漆器店」では、一希くんの仕事場を訪問した動画も公開しています。

3. 真正直な輪島塗を届けたい。頑固な職人気質、祖父の思い

そして、私がもっとも尊敬する職人といえば、田谷漆器店8代目で現会長の祖父・勤(つとむ)。
19歳で職人の修業を始めて24歳で家業を継ぎ、輪島塗一筋60年以上。まさに輪島塗の生き字引です。

子供の頃から祖父が黙々と仕事をする姿を見てきましたが、私が家業を継いでからは、輪島塗に対する知識や経験、全身全霊を傾ける姿勢に、より一層、敬意が増しています

経営者としては一線から退いたものの、職人として仕事を続ける祖父は、輪島塗の品質や取り扱い方に厳しく、ときに異常と思えるほどのこだわりを持っています。

土日も工房にやって来ては、商品を確認したり、作業したり。仕事熱心ですごいと思う半面、祖父がいるとほかの従業員も工房に来ざるをえず、実は少し困っています(笑)。

しかし、こうした輪島塗に対する強い思い入れは、すべてお客さまに最高品質の輪島塗をお届けしたいからこそ。

「嘘のない輪島塗を、お客様へ誠実にお届けすれば、長く商売できる」。

そんな祖父の口ぐせを私も受け継ぎ、有言実行しています。

4. 輪島塗職人の仕事は非効率!? だからこそ、良いものができる

こうしてさまざまな専門の職人たちを介して作りあげていく輪島塗は、現代の価値観とは真逆。

効率や利便性が重視される世の中と異なり、手仕事でゆっくり丁寧に作ることで品質を高めていく世界です。

ゆっくり丁寧に作る理由のひとつは、塗った漆を急いで乾燥させた場合に残る独特の匂いや、漆によって稀に起こる皮膚のかぶれを未然に防ぎ、お客さまに気持ち良く輪島塗を使っていただきたいから。

そしてもうひとつは、完成後も固まりつづける漆のために、急いで仕上げて脆弱な器とならないよう、漆器を寝かせる時間を考慮しているからです。

昔ながらの手仕事で、職人たちが漆と対話をしながら「ゆっくり作る」。
この工程を経て完成した輪島塗は、しなやかな強さ、温もり、美しさを備えた器となります。

だからこそ、実用の器を原点とする輪島塗は、普段使いでこそ真価を発揮します。

ちなみに輪島塗の世界では、職人の高齢化と後継者不足が進んでいます。輪島塗に愛情をもって仕事に取り組んでくれる職人が育っていけるよう、輪島塗について楽しく発信していくことが、塗師屋(ぬしや)である私の勤めだと思っています。

5. 遊び心の“えくぼ”をプラス。「一器多用」なフリーカップ

輪島塗版・マグカップをイメージした「木々」。すとんとした円柱形は、輪島塗では定番のフォルムです。カップの中身の熱が外に伝わりにくいため直に持つことができ、飲み物だけでなくスープやデザートなど幅広い用途に使えます。

片側にある可愛い“えくぼ”(凹み)は、持ちやすさを追求した塗師屋と職人たちの遊び心から生まれたアイデア。輪島塗ならではの優しい手触り、口当たりをお楽しみください。

輪島塗 フリーカップ「木々」

黒・溜/各11,000円(税込)

【田谷漆器店 10代目・田谷昂大】

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