棗を選ぶなら輪島塗。お家で気軽に抹茶を点てる

「全日本人味噌汁椀輪島塗化計画」ブログでは、輪島塗の食器をもっと普段の食卓で使ってほしいと願い、とくに味噌汁椀こそが輪島塗の魅力が一番伝わると考えている田谷漆器店・田谷昂大が、輪島塗の良さや使い方、味噌汁椀をはじめとするお勧めのアイテムなどをご紹介していきます。

 

おいしい抹茶を、家で楽しみたい。

健康志向の高まりを受け、抹茶は世界でも人気を集めています。

「お茶を点てる」というと「正式な作法が分からない」と躊躇してしまいそうですが、家庭でいただくお茶であれば、もっと気軽に考えても良いのではないでしょうか。

お家で抹茶を点てる際、茶碗や茶筅(ちゃせん)とともに揃えたい茶道具の1つが棗(なつめ)です。棗とは、抹茶の粉末を入れる容器のこと。木製の漆塗りで出来ていて、さまざまな形や種類があります。

そこで今回は、輪島塗の企画・デザイン、販売を担う総合プロデューサーである「塗師屋(ぬしや)」の視点から、茶道具の棗についてご紹介したいと思います。

目次

1.棗が薄茶用となったのは江戸時代から

2.一般的な形は「利休形・中棗」。輪島塗の棗は加飾も魅力

3.抹茶はデリケート。だからこそ、輪島塗の棗を選びたい

 

1.棗が薄茶用となったのは江戸時代から

日本における塗り物、つまり漆塗りの茶器のはじまりは、「金輪寺(きんりんじ)」と呼ばれる筒型の茶器。14世紀の南北朝時代に後醍醐天皇が蔦(つた)の古株で作らせたとの伝説があります。

そして、棗形の茶器を最初に用いたのは1564(永禄7)年、茶人・津田宗達が開いた茶会であることが、宗達とその子、孫が書き残した『天王寺屋会記』に記されています。その後、千利休をはじめとする茶人たちによって棗が使われるようになり、江戸時代以降、濃茶(こいちゃ)、薄茶(うすちゃ)の区別がつくようになると、棗は薄茶用の茶器として一般化していきました。

そもそも、茶道で出される抹茶には、表面が泡立ってさらりとした口あたりの薄茶と、濃くてトロリとした濃茶の2種類あり、棗を用いるのは薄茶の場合。薄茶を入れる器を「うすき」と呼び、濃茶を入れる器は「茶入(ちゃいれ)」と呼ばれ、茶入はおもに陶器で作られています。

ちなみに棗という名の由来は、植物のナツメの実に形状が似ていることから、こう呼ばれるようになりました。

■Point
薄茶を入れる棗は漆塗り、濃茶を入れる茶入は陶製の焼きもの

 

2.一般的な形は「利休形・中棗」。輪島塗の棗は加飾も魅力

棗にはさまざまな形や色がありますが、広く知られているのが「利休形(りきゅうがた)」。侘(わ)び茶の大成者として知られる千利休が好んだ形や寸法の棗で、利休の流れを汲んだ茶人たちによって継承されてきました。

サイズで大別すると「大棗(おおなつめ)」・「中棗(ちゅうなつめ)」・「小棗(しょうなつめ)」に分けられ、ほかにも全体が平べったい「平棗(ひらなつめ)」や、裾が張った「尾張棗(おわりなつめ)」、細長い形をした「長棗(ながなつめ)」、円筒状をした「中次形(なかつぎがた)」などがあります。

色については、初期に登場したのが黒塗(くろぬり)と呼ばれる、無地の黒漆(しっこく)で仕上げたシンプルな漆器。

器全体を黒塗の無地で施したものを「真塗(しんぬり)」または「総黒(そうくろ)」と呼び、真塗には黒蝋色漆の塗装が使われ、油分をしっかりと含ませた高級な黒漆で上塗りが施されています。

次に登場したのが溜塗(ためぬり)で、器本体に朱色の下地塗りを行い、その上から半透明の透漆(すきうるし)を塗り重ねて仕上げたもの。使い込むほど下地の朱色がうっすらと現れることでニュアンスがうまれ、その変化を楽しめるのが魅力です。
時代の流れとともに加飾(さまざまな技法を用いた装飾)にもこだわるようになると、豪華な沈金(ちんきん)や蒔絵(まきえ)、螺鈿(らでん)などで絵柄を描いた棗が広く出回るようになりました。

ちなみに茶道では、季節や茶会の目的にちなんだ絵柄の棗を用意することも、おもてなしの一つとされます。

輪島塗といえば、全国でも他に類を見ない細分化された製造工程による「堅牢優美」さが魅力。しっかりと時間をかけて土台をつくり、漆を幾重にも塗り重ねてあるため、沈金のように模様を彫って金粉などを埋める加飾には最適の漆器なのです。

■Point
実用性と芸術性が求められる棗に適した「堅牢優美」な輪島塗

 

3.抹茶はデリケート。だからこそ、輪島塗の棗を選びたい

繊細な抹茶は温度や湿度の変化など外部の影響を受けやすく、保存の方法次第では急速に劣化が進み、風味を損ねてしまいます。

こうした事態を防ぐには、適切な温度や場所で抹茶を保存すること、また、棗の選び方にも注意が必要です。

棗を選ぶ際には、合口(蓋と身の合わせ目)がピッタリと合わさる、密閉性が高いものを選ぶこと。また、外気や人の手などの熱が器の中に伝わりにくい素材が良いと思います。

その点、輪島塗の棗は断熱性に優れ、中身の風味を損なわないといわれています。

国産の木と漆で出来ているので安心して使っていただけますし、手触りが良くて軽いので、扱うたびに心地いい。さらに使い続けるほどにツヤを帯び、風合いが増していく点も、自然素材ならではの魅力です。

また、繊細な見た目とは違って丈夫なので、多少のことで損壊する心配もありません。たとえ使い続けるうちに割れたりヒビが入ったりしても修理ができますから、長い目で見ると環境に優しくてリーズナブル。

茶道具である棗は、茶道具店で購入するのが一般的ですが、私たちのような漆器専門店でも、もちろん取り扱っています。多少のお時間をいただければ、好きな絵柄でおあつらえ(オーダーメイド)いただくことも可能ですので、まずは気軽にご相談ください。

慌ただしい朝、出勤前や家事の合間に抹茶を一服点てて、ひと息入れる。
美しい棗を愛でながら、こころも潤す。

そうした時間こそ、真の贅沢かもしれません。
 

【田谷漆器店・田谷昂大】

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